宝塚歌劇団の団員の死亡事件について、調査チームの報告書を受けての劇団の会見、それを受けての被害者側代理人弁護士の会見を視聴し、報告書を読んだ上での思うところを記して置くことにする。
劇団の会見、報告書について
亡くなった団員の過重労働を認め、新人公演の長としての仕事がこれほど多岐に渡ることを認識していなかったとし、今後速やかに改善する方針を出したのは良かった。
アイロン事件について週刊文春に事実無根と回答したのは言葉足らずであった。アイロンが当たったという事実は確認したことを説明すべきだった。
ヒアリングの結果、パワハラや虐めは無かったと結論を出すのは早すぎるかと思う。
宝塚は上級生から下級生への芸の伝承で成り立っている部分が大きい。指導とパワハラの線引きは個人の感覚で異なるのでその判断は難しいと思う。
前体制の2月の話し合いに於いて、故人が発言したくない旨を申し出ていた事を知らない下級生から不満が生じ上級生との間に溝が出来たとのこと、厳しい上下関係がある中で大勢の組子の前で故人に発言出来る訳もなくこの話し合いは大変な悪手であったと感じる。
故人が新人公演の配役について発表前にLINEで下級生に送信し後に削除したこと、振りうつしの日程調整、公演の本役への挨拶を怠ったことなどのミスについて発言が二転三転した為、嘘つき等の強めの指導がありこれをパワハラと言うのかもしれないが、初日を間近に控えた上級生のイライラも理解出来る。
102、104期の補佐があったとはいえ、娘役2人で難しい公演の長の期を勤める下級生の気持ちにもう少し寄り添う気持ちがあったら思う。
4人のヒヤリング拒否、下級生のラインにある問題点についてももう少し知りたいところだ。
卒業した前トップや退団者、他組の団員にもヒアリングを広げるべきかと思う。
遺族側代理人の会見について
まず印象的なのが、遺族がヘアアイロン事件について並々ならぬ怒りを抱いていることだ。
代理人が冒頭からこの事に言及したことからもうかがえる。
私はヘアアイロンで前髪の作り方を指導することはスカイステージでこれまで娘役の美容に関する番組を観ていて理解出来るが、もし不注意によって相手に軽傷でも火傷を負わせれば上下関係など関係なく人として謝罪するのが当然と思う。
その謝罪がないとは驚きだ。
故人はこの上級生に苦手意識があったと報告書にあった。故人が苦手と思い故意に火傷させられたと感じるに至った人間関係にそもそも問題があったと思う。
故意に火傷を負わせたかは負わせた本人にしか分からないことなので立証は難しいとも思う。
遺族の故人から聞いていた伝聞やLINEのやりとりと劇団の報告書には相違も多い、調査委員会は伝聞は証拠として認めないのでパワハラや虐めとは認められないという結論になったと思う。
残念ながら虐めの無い社会は存在しないと思っているのでこの結論には賛同出来ない。
音楽学校時代から厳しい上下関係の中、宝塚を愛する気持ちだけで厳しいお稽古に耐えて精進し続けて観客に夢を見させて来たタカラジェンヌたち、パレードで見るお客様の笑顔を励みに青春を捧げて劇団に身を置いている。
清く正しく美しくを実現するのは難しいから理念に掲げているのだ。
悪しき伝統は迷わず捨てて意識を大きく変えて行かなければ時代遅れとなり存続も難しくなると思う。